ある日見た夢:少し遠い過去
僕の手には大事なものなんて何ひとつ残らない。
いつもこの腕をすり抜けて、僕だけがそこに残される。
すべて消える夢。
すべて光のチリになって消える夢。
僕が大切にしたいひと。
僕が大切にしたいもの。
大切なひとたちとの、思い出の品。思い出の写真。思い出の……。
大切なものにはすべて「色」がついていた。
すごく綺麗な色。
モノトーンの景色の中で、眩しく光る、色。
でも。
僕がちょっと目をそらした瞬間、僕がちょっと気を抜いた瞬間、みんなチリになっていく。
レインボーのラメのようにキラキラ光ったチリになる。
あわてて手にしようとしても、そのそばからつかめないチリになって、やがて消える。
抱きかかえて消えないように祈っても願っても、みんなみんな消えてしまう。
そこは色のない世界になった。
僕は、思いきり叫んだ。
『どうしてっ……どうしていつもみんな消えんだよ!!
どうしていつも大切なものは何ひとつ残らないんだよおぉっっ……!!』
……目を醒ました。
部屋の中に、ひとり。
いつもと変わらない光景。
でも、それが、その日だけはとてつもなくこわいものに思えた。
この世に、僕しかいなくなってしまったような気がして。
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