0距離の魔術師
昔話なんですが、僕は昔、どうしようもない人間不信に陥ったことがありました。
でも、それから解放してくれたひとたちが、いたんです。
同じ目線で、同じ温度で、同じ気持ちを、わかってくれて。
そして、やさしく僕を、諭してくれたのです。
まるで、魔法使いのようでした。
限りなく至近距離で、僕に魔法をかけてくれた、そんな感じがしたのです。
……そのひとたちは、もういないのですが。
いないからこそ、僕はそんな魔法使いになりたいと思うようになりました。
あの、0距離の魔法を、もう一度再現したい……。
……僕は、儚げな天使のために、あるいは、他の誰かのために、「0距離の魔術師」に、なれるでしょうか。
そしたら、誰かに必要とされるのでしょうか。
僕の存在意義は、確立されるのでしょうか。
……僕は、限りなく、自分自身の存在に、自信がないのです。
自分の存在意義は、自分で、自分の中に見つけなければいけないものなのですけれども……それができずに、どうしても他人を通じて探してしまう僕がいます。
他人の中に見つけようとするのは、いけないことなのですが……。
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